懐かしくも濃密なファンタジー『ダンジョン飯』レビュー【大人の絵本】

2024年1月よりアニメ放送中『ダンジョン飯』(漫画版を中心)の感想・レビューです。
内容的にネタバレも含みますので注意してください。

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『ダンジョン飯』あらすじ

ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた! 命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。 再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。 妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。 「食糧は、迷宮内で自給自足する!」 スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン! 襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!

『ダンジョン飯』感想

2024年にアニメ化されてから国内外に多くのファンを魅了している『ダンジョン飯』。

初めて手に取った時から感じた「懐かしい」という気持ち。

最近は「なろう系」と呼ばれる作品が人気を席巻していますが、純粋なファンタジー作品で設定が練り込まれている漫画との出会いは嬉しかった。

私にとってのファンタジーといえば、『ロード・オブ・ザ・リング』『ハリー・ポッター』『デルトラ・クエスト』など。

年齢がバレそうなラインナップですね!

そんな往年の名作を久方ぶりに、大人になって手に取ったかのような雰囲気を『ダンジョン飯』から感じるぐらいに、今や希少な雰囲気を持った作品です。

ファンタジー世界で「グルメ漫画」という異色の組み合わせ

『ダンジョン飯』というタイトルから分かるように本作は、『飯=グルメ』漫画です。食材はダンジョンのモンスターたち。

しかし、『ダンジョン飯』ではただドラゴンの尻尾を焼いた骨付き肉なんて「調理」を挟まないメニューはありません。

きちんと「調理」をするのが『ダンジョン飯』の面白いところ。

もちろん全ての料理が空想というわけではなく、現実的なメニューを落とし込んでくる辺り、読者に味の想像もさせてくる「考える楽しさ」を味わえるのも魅力と言えるでしょう。

ちなみに原作では料理が完成した際に、ビタミンなどの栄養素グラフまで表記される丁寧な設計。当時はどの栄養素が高くなるんだろうと想像しながら読んで楽しんでました。

コイン虫とか食べてみたい

脳ドリアなんて名前がすごいけど、食べてみたいよ

状況と雰囲気のアンマッチさが面白い空間を作り出す

あらすじにも書いた通り、本作の目的はドラゴンに食べられてしまった妹を救出。しかも物資はなく、現地調達しなければ、食事にもありつけないという危機的状況。

そんなはずなのに、食材調達や調理シーンから生まれるキャラクターの個性を印象付けるエピソードの数々。

モンスターに関して完全に振り切っているライオス。

理知的な振る舞いをするマルシルの鋭いツッコミ。

その他にも性格が愉快なキャラクターが多く、絶望的なスタートを切っているにも関わらず、読み進めている中にマイナスな気持ちを抱かせないのも強みと言えるだろう。

ハイ・ファンタジーらしい世界設定にリアルな解釈

ここまで「グルメ」と「キャラクター」を中心とした感想を語ってきましたが、この2つの要素の根幹とも言える設定と解釈にこそ、大人がハマるポイントでしょう。

ファンタジーに限らず、ゲームなどでも耳にする「回復魔法」が登場します。ですが、通常の「回復魔法」とは違って副作用があるのが本作。

負傷した肉体を魔法で回復するものだから、肝心の肉体は追いついていない。結果として、傷は治るけども「回復痛」なるデメリットがあったりと、普段は便利で無視していた部分も設定が用意されているのです。
※ベテランであっても嫌がるぐらいに痛いらしいです笑

魔法ばかりで解決しないっていうの創意工夫が見えていいんですよね。

主人公であるライオスが魔物好きということもあってか、作中に登場する魔物は食材と紹介される側面もあるが、きちんと魔物の生態面も解説される。

例えば、さまざまな作品で登場する「スライム」も本作の1話に登場する。この「スライム」にも生き物として構造や内臓までもキャラクターが解説してくれる。(自然に解説してくれるのでくどくない)

今まで多く作品で「スライム」に触れてきたが、特徴としては

  • 最弱の魔物
  • ゲル状もしくは軟体
  • 物を溶かす酸性の体
  • 物理攻撃に耐性があり、火に弱い

などは耳にしたことがあるのではないだろうか。

しかし、『ダンジョン飯』の「スライム」には内臓までも紹介される。

この辺りは大人になった今だからこそ、作品の深みを増す要素として受け入れられる。

ちなみにこのスライムもただの魔物としての登場ではなく、干しスライムとして食材化するという本作らしい。

マルシルが襲われた直後だから怖さもあるシーンだったんだよ

「設定」好きにはたまらない瞬間だけど!

『ダンジョン飯』の評価は?

評価:

存在は知っていましたが、最終巻が発売されてから一気読みした作品の『ダンジョン飯』レビューでした。

この作品の一番好きなのは「設定」が一際丁寧という点。多くのファンタジーでは、敵としての存在も『グルメ(食材)』という新たな要素が加わることで、情報としてより多角的に紹介されます。

漫画を読み進みながらも、図鑑を読んでいるような感覚も味わえるのが本作の特徴でしょう。

『ダンジョン飯』は全14巻とボリュームもちょうどいいので、時間がないという方にもオススメの漫画ですよ。

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